君と初めて会った日





「ん?」


ノックターン横丁に程近いダイアゴン横丁の一角で
ひとりの男の子が人が通るたびにその人の顔を確認しながら、
オドオドと様子を伺ってる小さな男の子を見つけた。
親とはぐれたのかな?そう思って声をかける。


「僕、どうしたの?」

「誰だ、お前は!」


声をかけた瞬間びっくと肩が動いたかと思うと今度は挑戦的な目でコチラを見上げている。



教育がなってない・・・


と思いながらも、相手は小さな男の子。
冷静さを取りつつ、男の子の質問に答える事にした。


「誰だって・・・私はよ」

「マグルか?」

「どこをどう見たらマグルに見えるのか知らないけど、私はホグワーツに通ってる立派な魔女よ」


だいたい、ダイアゴン横丁に居る時点で、魔法使いと関わりのあるものしかこの場所には入れない。
ホグワーツのローブまで着ているというのに、マグルか?とは失礼するわね。


「フン、僕はセブルス・スネイプだ」


スネイプ・・・?聞いたことないな。


「そう、セブルス、単刀直入に聞くけどあなた迷子?」

「僕は断じてそんないかがわしい者ではない!」


話が通じない・・・。
迷子がなぜいかがわしいのか私にはさっぱり分かりかねる。

だいたい、ちょっと変だけどしっかりしていないわけでもないし、
それに彼と話していても疲れるだけのような気がするので
迷子じゃないと言うならこの辺で引き上げる事にした。


「あ、そう。じゃあ行くわ」


そう言って踵を返す。
歩きだそうとして・・・ん?


「あのさ、離してくれない?」



男の子が私のローブの端を掴んで離してくれない。
見ようによってはすごくかわいい行動であるのだけれど…。


「僕の個人情報を話したんだ。最後まで付き合え」

「迷子じゃないんでしょ?」


さっき否定された言葉を繰り返す。
だいたい、個人情報って・・・名前しか知らないんですけど?


「・・・母上が迷子なんだ」


視線をそらせながら紡がれた男の子の言葉は私を笑いの渦に巻き込んだ。
変な所で高いプライド。私の寮にもそんな奴がいっぱいいる。


「・・・そ、そう・・ふふ・・・分かった。お母さんを探すの手伝ってあげるよ」


理由はなかった。ただ、気に入ったのだ。この面白い少年が。


「で、お母さんとは何処に行く予定だったの?」

「ノックターン横丁」


あぁ、なるほど、母親はここにこの子を置いていったに違いない。
まだまだ、小さいこの子には少々危険な場所でもある。
とかいってる私だって、数回足を踏み入れた事がある位なんだけれど・・・。
ということは、この近くにいればこのこのお母さんは見つかるわけで、
ここでずっとこの小さな少年と目線を合わせて立ち話をしているのも嫌なので
近くのカフェを指して男の子に言った。


「そっか。じゃああそこのカフェで待ってようか。
 あそこからならお母さんが帰ってきたときも見えるしね」


こくりと頷いた少年は年相応に見えて可愛かった。
にっこり笑って手を差し出す。
少年は手と私の顔を見て、恥ずかしそうに手を取った。

目的の場所につくと、席に通された。
少年にはまだ椅子が大きいのか、足を遊ばせてぷらぷらさせている。


「何にする?」


そういってメニューを差し出す。
しばらくして少年が指し示したのは、チョコレートパフェ。
わかったと頷いて、店員さんを呼び止める。
私のケーキと紅茶、それから少年のチョコレートパフェ。

行きかう人々の中をしばらく見ていると、
注文した物が運ばれてきた。

自分の手に少し余るスプーンと格闘しながら
パフェを食べ始める少年を見て自然と笑いが漏れた。

少年の口元にチョコレートがついてるのを見つけて、
ぽんぽんと自分の顔を指差すと男の子もそのあたりの顔を触るが、まったく取れてない。

思わず手を伸ばして、チョコレートを取ってあげる。


「美味しい?」


こくりと頷く少年を前にまた笑みが漏れる。
何かとても良いことをした気分だ。

食べ終わった後も少しゆっくりしていると、男の子の視線が一点でとまった。
その視線の先を見ると一人の女性。



「お母さん?」

「そうだ」

「じゃあ早く行かないと。見つかってよかったね」


少年は私の顔をしばらくじっとみて、椅子から飛び降りた。
そのまま母親のほうへ走っていこうとしたが、男の子は何かを思い出したかのように振り返った。


「……ありがとう。


それだけ言うと男の子は人ごみの中に消えていった。
遠めに母親らしき人と再会してるのを目にして、私も残っていた紅茶を飲む。



―――そして、この数年後、私はこの男の子とホグワーツで再開することになる。


「セブルス・スネイプ」

「スリザリン!」



数年前にあった男の子を前に私はにっこりと笑って歓迎しよう。



「ようこそ。誇り高きスリザリンへ」




FIN